試験情報
微生物試験
食品の微生物試験
食品の微生物検査を定期的に実施することは、品質管理上、また食中毒予防の上からも極めて重要です。特に、気温や湿度が高くなってくる夏期は、細菌が増殖しやすい環境となり、細菌による食中毒リスクも高くなってきます。
微生物検査には、食品全体の汚染指標を調べる衛生指標菌検査や、食中毒の原因となる食中毒起因菌の検査があります。
主な検査項目
【一般細菌数】
食品中に存在する細菌の総数(好気的条件下で発育する中温性の細菌)を測定します。一般細菌数が多い場合は、製造工程中の不備(洗浄や加熱不足等)や不適切な温度管理が原因として疑われます。
【大腸菌群 / 大腸菌(E.coli)】
大腸菌群は、動物の腸管内や土壌、水といった自然界広域に存在する菌ですが、加熱に対しての耐性は強くありません。大腸菌群が検出された場合は、加熱不足やその後の不適切な取り扱いが原因として疑われます。
大腸菌(E.coli)は、糞便系大腸菌群の指標として評価され、検出された場合には、糞便系の汚染があったことが原因として疑われます。
【真菌数】
真菌にはカビおよび酵母が含まれます。真菌の汚染は異物や異臭のクレーム発生の原因となります。真菌は一般環境中にも広く存在することから、真菌数が多い場合は、製造環境での繁殖や、長時間にわたり不適切な環境にさらされていたことが原因として疑われます。
【黄色ブドウ球菌】
黄色ブドウ球菌は、主に人の手指や鼻腔内等に存在しているため、製造従事者による不適切な取り扱いがされていないかの指標とされます。また、汚染された状態で室温に長時間放置された等不適切な扱いがあると、病原因子である毒素(エンテロトキシン)を産生して食中毒を引き起こすリスクが高まります。
【腸管出血性大腸菌】
食品中の腸管出血性大腸菌検査は、平成9年7月に厚生省より通知が出され、当時は血清群O157を対象としていましたが、その他の血清群によっても重篤な症状を引き起こす事例が確認され、その度に対象となる血清群が増えています。
平成26年11月に出された検査法の通知では、日本での過去の感染報告数や重篤の報告から6血清群(O26、O103、O111、O121、O145 及び O157)が選定されております。
当研究所では現行の通知に基づき食品中の腸管出血性大腸菌検査(6血清群)を実施しております。
試験項目 | 腸管出血性大腸菌O26、O103、O111、O121、O145 及び O157 |
試験対象品 | 食品全般 試験品の送付温度帯は流通と同等にてお願いいたします |
試験方法 | 平成26年11月20日食安監発1120第1号 「腸管出血性大腸菌O26、O103、O111、O121、O145 及び O157の検査法について」 |
ISO法に基づく食品の微生物試験
食品の微生物試験法には、わが国の食品衛生法に基づく試験法、業界団体で作成したガイドライン・マニュアルに基づく試験法、自社管理基準に基づく試験法など種々の方法があります。
ISO(the International Organization for Standardization 国際標準化機構)法は、各国の標準化機関(ISO会員団体)による連合機構で作成された国際的に通用する規格の微生物試験法です。
最近、食品を海外に輸出する際には輸出先からこのISO法による試験成績を求められることも増えてきています。
当試験検査センターでは、ISO法に基づく食品の微生物試験を実施しております。
一般食品のノロウイルス試験
食品中からのノロウイルス検査法としては厚生労働省より平成15年11月に出された通知(平成19年5月に改正)が広く用いられておりましたが、食品に含まれる成分によって検出感度が異なることや微量の検出に問題があったことから、平成25年12月に改めて二枚貝以外の一般食品について検査法の通知が出されました。
当協会では新しい通知に準じた一般食品中のノロウイルス検査の受託を開始すると共に、通知の手法において結果の定性性に影響しない箇所を一部変更し、検査費用を抑えたノロウイルス検査もご用意させて頂きました。
ノロウイルスの検出法
ノロウイルスの検査法としては抗原抗体反応を利用した方法や遺伝子を増幅して検査する方法など様々なものがありますが、食品からの検査法としては平成15年に厚生労働省より通知された「ノロウイルスの検出法」に基づくRT-PCR法とリアルタイムPCR法が主流となっていました。
しかし、ノロウイルスは微量の摂取でも感染が成立すれば食中毒を引き起こしますので、貝の中腸線を用いる方法を基本としていた従来の方法では食品における感度が不十分という問題を抱えていました。
平成25年に出された通知においてはヒトガンマグロブリンとホルマリン固定した黄色ブドウ球菌を用いて食品中のノロウイルスを濃縮し、感度を上げる方法が開発・採用されております。
当協会では一般食品(二枚貝を除く食品)につきまして、通知法と同様にパンソルビン・トラップ法を用いたノロウイルスの濃縮とnestedリアルタイムPCR法による検出を組み合わせたノロウイルス定性検査の受託を行っております。
通知法および当協会の試験法
試験項目案内[ノロウイルス]
試験対象商品 | 一般食品(生鮮二枚貝を除く) |
試験項目 | ノロウイルスGⅠおよびノロウイルスGⅡ |
検出下限 | 100copy/g ※食品の種類によっては、100copy/gの検出感度の保証が出来ない可能性がございます |
試験方法 | パンソルビン・トラップ法によるウイルス濃縮を用いたリアルタイムPCR法(定性) 平成25年10月22日付け食安監発1022第1号の通知に準じた検査の実施につきましては、別途お問い合わせください |